勝ち将棋の再現性を高める話と角換わり腰掛け銀新型同型

負けた将棋、あるいは実質的に負けで、(自分なら、あるいはそれよりも上級者ならしないであろう)相手のミスに救われただけの将棋について、敗因を分析することは上達に重要な役割を果たすと思われる。

ありうる敗因としては、以下のようなものが挙げられるだろうか。

 

① (比較的短手数、あるいは長手数でも並べていけば簡単な)詰みを逃した

② 典型的な囲いの形に対する寄せが下手(美濃崩し、矢倉崩しなどを正確にできれば勝ちだったのに、それが正確にできなかったため速度が逆転して負けた)

③ 仕掛け自体が無理筋だった、あるいは定跡手順通りの仕掛けをやろうとして途中で間違えた

④ 仕掛けがひと段落したところ、難解な中盤で悪手や疑問手を指して、形勢に差をつけられた

 

①については詰将棋を解いて感覚を養えばいいし、②についても囲い崩しの本を読んで勉強をすればいい。③についても戦術書を読んで定跡手順を覚えればいいので、それぞれ対処はしやすそうだ。

例えば、ノーマル四間飛車などは定跡書も数多く出版されており、居飛車側の対策も体系化されている。四間に振って美濃囲いに組んで急戦を受け止めカウンターする。持久戦にはじっくり組み合って盤上の駒を活用していく。

道のりは長いが、見よう見まねで急所を掴んでいない「なんちゃって藤井システム」を指すよりはこちらの方が着実な実力がつくだろう。藤井九段も(藤井システムを指したいなら)「まず四間飛車を5年指してください」のようなことを言っていた。囲いに入るタイミングというファクターを含めた高度戦術を扱う前に、「美濃囲いに入って戦う」と単純化し、その感覚をマスターするというのは理にかなっている。

 

しかしながら、仕掛け以降勝ちきるのが大変で、かつ局面の分析がしにくい将棋に関して、④の改善を図るには相当苦労しそうだ。

勝ち切るのが大変とは、

・薄い玉形

・手段がたくさんあり、その組み合わせが複雑

局面の分析がしにくいというのは、上2つに加えて「攻めエリアと守りエリアの区別が曖昧」という要因が挙げられるだろう。

 

ここまで書いておけば誰でも気づくと思うが、要するに敗因分析のしにくい将棋とは表題の通り角換わり腰掛け銀の新型同型(4八金2九飛・6二金8一飛)の事である。(ついでに言えば2五歩型)

決定版の出る前の戦型ではどうしても体系的な勉強がしづらいため、個人差が大きそうだ。

仕掛けの成否を判断する要素としては以下のようなものが挙げられるだろうか。

・玉の位置(6八[基本図]、6九[三角手待ちでありうるがすぐに6九飛ができない]、7九[上からの攻めに遠い]、8八[入城、飛車おろしが先手にならないが上から斜めから当たりが強い]、5八[4八の金に紐付け、場合により右玉]、右玉、etc.)

・4筋(6筋)の歩の位置(6六歩型では位取りを拒否できるが、6五歩からの仕掛けを与える、6七歩型では位取りや6五桂からの仕掛けを与える)

・4五歩や4五桂からの仕掛けによって生じる持ち駒(銀、桂、歩)

・角の打ち込み

・桂頭攻め

・端

・手損による手番の違い

千日手の打開義務(先手)と待機あるいは仕掛けの完封策(後手)

角換わり特有の要素、角換わり腰掛け銀特有の要素、4八金2九飛型特有の要素、と違いはあるが、大雑把に言ってもこれだけの要素を考慮する必要がある。素人が定跡手順を体系化するのは輪をかけて困難だろう。

 

安定した勝率を出すには不向きとしか思えない戦法であるにもかかわらず、級位帯でも指されているのは、プロが指している最新形に対する憧れという最も大きな要因を除けば、結局のところ基本図、あるいは仕掛けがひと段落した時点での角の打ち込みの隙のなさに由来するところが大きそうである。(あとは単純に、全体的に急戦将棋を避け難くなっているということ。)

例えば、角換わり旧型同型での定跡の決定版とも言える富岡定跡では、63手目の2二歩の時点で、馬を作りあった上先手は飛車を取られている。ここからの寄せ合いで先手の攻めが細いようであるがつながっており、先手玉は際どく詰まないのだが、細かい変化を知っていなければ大変に感じる。むしろ攻めを急かされている印象で、初見では先手を持ちたくないだろう。

 

雑に言ってしまえば、級位者の角換わり腰掛け銀は4七銀からの一連の手筋などを利用して挟撃形をうまく作った方の勝ち!

細い攻めをつなげて勝ち切るというのはとても難易度が高いので、端っから相手の不勉強に期待して、カウンター一点狙いの人も少なくない。

ある意味でこういう立場は、勝ち方の再現性を高めていると言えるか。

 

ところで、真田八段の新著『角換わりの手筋』が発売されたが、新型同型に関する手筋が少ない、旧型向きではないか、という理由から評価していない人も見かける。前述の理由から、手筋主体というよりは個別局面の読み主体、という印象のある戦型で簡便な手筋化は難しいのではないだろうか、と思っている。しかしながら、進行によっては下段飛車から組み替えて行くこともありうる(銀矢倉からの展開)ので、入城形の復活と相まって、使いようによっては4一角などの打ち込みについてなど、流行形でも応用可能な手筋もあるのではないかという印象を持っている。

 

レベルに応じていろんな悩みがあるのだろうが、読みの力比べをする時代に再現性の高い勝ち方をしようと思ったら、畢竟地道な読みの蓄積くらいしか薬はないのではないだろうか。

短時間切れ負け将棋は相性が悪そうだ。

横浜棋王戦に参加した

先週の土曜日に横浜棋王戦に参加した。Cクラスで。

上位入賞者はそこそこ高額な商品券がもらえるので、棋力詐称の絶えない大会なのだが、流石に将棋連盟道場で四段の人が級位を詐称して出場するのはいかがなものか。

……と思うのだけれど、同姓同名の別人なのでしょうかねえ。

 

以下、大会の感想。

 

とにかく横歩取り超急戦での即死は避けたいなという思いがあるので、先手番なら7六歩3四歩スタートには6六歩とする予定だった。7六歩8四歩でも、想定局面への誘導率の観点から、7八飛から先手三間飛車を目指す予定で、相居飛車の先手番を持たないことにした。

後手ならば2手目8四歩から追随するつもりだった。(しかし1局のみ2六歩3四歩スタートにしてしまったのだけれど……。)

 

予選1局目はこちらの先手三間飛車に後手居飛車穴熊模様。トマホーク警戒で5筋不突きは減っているけれど、この棋力帯だとなぜか6四歩6三銀型に組んでくることが多いので、対三間5筋突き穴熊をリアルで相手したのは割と久しぶりだった。玉頭銀から穴熊を牽制した結果1二香を指しているものの潜らず放棄して左辺でごちゃごちゃやる展開になったのだけれど、お互いに桂馬が欲しい展開になり、囲いが半壊して3三に桂馬がいるために却って桂馬が使えている状態になった後手が実戦的にはよかったか、という展開になった。最後頓死して負け。チェスクロックに慣れてなさを感じる以上にエンジンがかかってないなと反省した。

 

2局目では小学生先手で角換わりに。5筋の歩を突いて矢倉に組んでくる子だったので隙は多かった。飛車を渡したものの、こちらは入城済み、向こうの守りは自陣飛車のみ、という形から、先手玉の入玉を防ぎつつ負けをなくすルートで手堅く勝った。

30秒であまり焦らなくなったのでようやくエンジンがかかってきたのを自覚。

 

3局目は相手の先手中飛車にこちらの左美濃+6四銀7三桂+8四飛車から仕掛けていく感じになった。端攻めで数が足りており1七の地点に銀を放り込んだら勝ち、という局面になったにも関わらず、端の数足りてないな、という勘違いをしたために必要以上に受ける、という謎のミスをしてしまうが、こちらが1手1手になった瞬間ようやく気づいて勝ち。

 

×◯◯で予選勝ち抜け。

 

本戦1回戦では小学生先手で、先手居飛車対後手向かい飛車。これが先述した2六歩3四歩スタートの1局。無理気味な仕掛けにカウンターして勝った。

予選の小学生だったか、この子だったか正確なところは覚えていないのだけれど、対局後に「頑張ってください」と言っていただいた。いつも大会で自分が負けた対局相手にそのように声をかけているようで、すごい子だと思わされた。

「この子、凡ならず」

 

本戦2回戦ではこちらの先手三間飛車に、相手の飯島流引き角。本来は向かい飛車に振り直してすぐの仕掛けを拒否しつつ、5筋から相手の不安定な角を追う、という方針で指すつもりだったのだけれど、引き角自体を自分の対局ではほとんど見ておらず、少し前にあった藤井猛–橋本戦を中継で見た程度だったので、その辺を全く思い出すことなく先に暴れられて困った。相手玉に頓死筋を用意して6六の香車が動けば勝ち、という局面にしたつもりだったのだけれど、4三の角が利いているのをうっかりしたため、7六桂からの頓死筋には同角成と取れる、という計算で負け。角の利きは3万回確認。

 

いい感じのスマホタッチペンを敢闘賞としていただきました。ありがとうございました。

 

書いてて気づいたのだけれど、きちんと棋譜を覚えていないから、盤面の再現がしたいときにできませんね。対局直後なら覚えているし、部分的には今でも思い出せるのだけれど、入力している最中に「ここでこんな局面になるならばこの手があってダメだからおかしくないか?」などとお互いの悪手に気づいてしまい、互いが対局中には感じていたはずの指し手の必然性が消え失せてしまうため、考えれば考えるほど棋譜の再現ができなくなってしまう、という現象。

 

まだまだ精進が足りないなあ、と。

できれば来年は、級位を卒業して低段の部に出場したい。

横歩取り超急戦との戦い

道場で昇級したばかりだったので、安定した連勝狙いというよりはどのような戦型を相手にしても戦えるように、というのをテーマに一日指した。

駒落ちは特有の戦い方になるので平手に絞っての話なのだけれど、後手ではよほど変わった初手でもない限り2手目☖8四歩党なので、先手が居飛車なら角換わりか矢倉か相掛かりになるし、振り飛車なら対抗形になる。後手を持って横歩取りになることはない。一方、先手番では事情が異なる。相手の手を見て指すことができないからである。一番厄介なのが☗2六歩☖3四歩の展開である。一発もらうことを避けるのであれば☗2五歩☖3三角と形を決めさせて横歩取りや角交換振り飛車を避けるのであるが、今回は事情が異なるので志高く☗7六歩と指す。すると困ったことに横歩取りに誘導される。

もちろん先手横歩で全く対策がないわけではない。3三角型ならば青野流にする。3三桂型も問題ない。問題は後手の超急戦である。

横歩取りも、通常の4五角戦法も対策済みなので、これらについてはしばらく相手にしていなかった、という場合でもそれほど脅威の相手であるとは感じないものの、今回は事情が異なった。3八歩戦法、3三角戦法と若干マイナーな超急戦ばかりに遭遇したからである。しかも前者に関しては、感想戦で「2八歩から4五角戦法にしようと思ったけど歩を打つ場所を間違えた」などと抜かしてきたから困った。

しかしながら、どちらも飯島本で解説されている上、個人のサイトでも解説されているような有名な超急戦の筋ではあるので、先手に正確に対応されて最終的に局面が落ち着いてしまえば困る。相手が間違えてくれれば途端によくなる☖6六銀みたいな手ではなく、評価値上互角の変化で妥協するのであれば先手としてもその変化を知っていれば良いだけなので勉強する範囲が極めて狭くなり脅威は小さくなる。いずれにせよ後手を持って指すべき戦法とは思わないのだけれど、そうはいってもやはり先手横歩を指すためのライセンスはもらえない程度の失敗をやってしまったわけなので、相手の戦法を否定するには至らない。なかなか厳しいものだ。

 

あ、他の戦型では高勝率を維持できたので、そういう意味では棋力向上を実感できました。

将棋倶楽部24をはじめた

将棋倶楽部24のアカウントを作成した。

数年前、電王戦のころからなんとなく将棋に興味をもち、リアル道場にちょこちょこ通うようになったものの、強い人がネット対局をしている24はずっと始める気になれなかった。

というのも、一度試しにスマホアプリからゲスト入場し、15級の人と対局した際に、っこてんぱんに負かされて以来、24の平均棋力は15級でも自分よりはるかに高いのだろうと思ったためである。

(今思えば、あれは実力的にはもっと上の段級の人が遊びでやっていたのではと思うのだが。)

 

しかしながら、他の対局アプリでは切れ負けが主流で、あまりじっくりと手を読むこともできなかったり、たとえひどい手を指しても切れ勝ちを目指すプレーヤーが多いので、みたいなよくある理由から、ついに24に足を踏み入れた。

 

以下、今日R対局で指した将棋について。

 

棋譜はShogi.ioに任せるとして、全体の感想。

リアル道場では端角中飛車以外の奇襲戦法に出会ったことがないのだが、ネットではよく見かけますね。浮き飛車系の戦法は、石田流を目指すか、大駒交換に強い陣形(アヒルなど)から攻めてくるのが主な狙いなんでしょうけど、秒に追われるとなかなか手強い。ストレートに組んでこない石田流系の戦法を指す理由としては、相手の甘い手を誘って理想的な受け形を作らせないのが狙いなんでしょうが、本譜は相手にとってはむしろ飛車先をお手伝いした相振りになっていて損なのでは、と思う。

このブログについて

近頃ぶらぶらと散歩をしながらとりとめもないことを考えている割に、全く文章を書いていないことに気づいたため、書き留めておきたいことを書き留めておくためのブログ。

将棋のことを書くかもしれない。